余剰の基本的な考え方とグラフの見方

経済学

私は先日、オリーブオイルを買いました。最近は、何でもかんでも値上がりしているので、多分1000円位かかるかなと思っていました。ですが、実際にスーパーに買いにいくと、たまたまオリーブオイルが特売されていて、800円でした!迷わずかごに入れて、買って帰りました!買い物上手と自画自賛したくなりますw

こんな風に、欲しかった物が予算より安く買えたとき、なんだか得した気分になりませんか?経済学では、この「得」を「余剰」と呼び、グラフ上の面積で表します。この記事を読めば、その「得した気分」が税金や貿易でどう変化するのか、グラフを見るだけですぐに分かるようになります。「余剰っていまいちわからない。。」「図形を見ても何が何だか良くわからない」こんな風に思っている方向けに、苦手意識を克服出来るよう、余剰についてまとめました。

余剰分析を基礎から正しく理解する3つのステップ

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 消費者の「得」と生産者の「得」をグラフで見える化する
  • 市場が最も効率的な状態である「総余剰最大化」のルール
  • なぜ余剰が減るのか?「死荷重(厚生損失)」というもったいない空白

経済学のグラフには多くの線が登場しますが、余剰分析で注目すべきは「グラフ上の図形の面積」です。この面積は、売り手と買い手が取引によって得た「満足の大きさ」を表しています。面積が広いほど、世の中全体が豊かで幸せな状態といえます。まずは、この図形がどこに現れるのか、その基本的な「形」を覚えることから始めましょう。

消費者の「得」と生産者の「得」をグラフで見える化する

僕がオリーブオイルをたまたま特売で安く買えたように、買い物をして「予算より安く買えてラッキー」と思ったことは、誰しもがあると思います。経済学ではこのお得感を「消費者余剰」と呼びます。グラフで見ると、右下がりの需要曲線(買いたい人の気持ち)と実際の価格の線に挟まれた、上の部分の図形がこれにあたります。

一方、お店側にも「予想より高く売れて嬉しい」という利益があり、これを「生産者余剰」と呼びます。こちらは右上がりの供給曲線(売りたい人の事情)と価格の線に挟まれた、下の部分の図形です。

つまり、価格の線を境目にして、上が「買う人の幸せ」、下が「売る人の幸せ」を表しているのです。グラフの面積計算は、単なる数学ではなく、この「みんなのハッピーの総量」を測る作業だといえるでしょう。

需要曲線は何故右下がりなのか、また、供給曲線は何故右上がりなのかを解説します。

需要曲線は、消費者から見た時の、物の価格と取引量を表しています。価格が上がれば、取引量が減ります。買いたいと思う人が減るからです。逆に価格が下がれば、取引量が増えます。買いたいと思う人が増えるからです。
よって需要曲線は、一般的には右下がりになります。
供給曲線は、生産者から見た時の、物の価格と取引量を表しています。価格が下がれば、取引量が減ります。価格が安いと、売りたい人が減るからです。逆に価格が上がれば、取引量が増えます。売りたい人が多くなるからです。
よって供給曲線は、一般的には右上がりになります。

市場が最も効率的な状態である「総余剰最大化」のルール

市場取引において目指すべきゴールは、社会全体の「得」を最大にすることです。これを「総余剰の最大化」と呼び、資源が最も無駄なく使われている効率的な状態を指します。

先ほどの「消費者の得(上の図形)」と「生産者の得(下の図形)」を足し合わせた面積が、一番大きくなる状態が、総余剰が最大の状態です。通常、売り手と買い手が自由に取引をして、需要と供給がぴったり一致する「均衡点」で価 格が決まるとき、この合計面積は最大になります。

誰かの指示や規制が入らず、市場の自由に任せることで、結果的に社会全体の満足度がマックスになる。この経済学の基本ルールを押さえておけば、余剰分析の理解がぐっと深まります。

この項目までで話が終わってくれれば、それほど難しくないし、理解もしやすいと思います。私も、この項目まではちゃんと理解できました。しかし、様々な条件により消費者余剰や生産者余剰は変化します。私の場合は、この消費者余剰や生産者余剰の変化が、どの様にグラフに影響するのかがいまいち理解できませんでした。。。
続きを見てみましょう。

なぜ余剰が減るのか?「死荷重(厚生損失)」というもったいない空白

現実には税金や規制によって、余剰が失われることがあります。これを経済学では「死荷重(しかじゅう)」や「厚生損失(こうせいそんしつ )」と呼び、グラフ上では本来あったはずの図形(総余剰)の一部が欠けてしまった部分として現れます。

例えば、税金がかかって価格が上がると、買うのを諦める人が出ます。すると取引の数が減り、その分だけ社会全体の満足度である余剰の面積も小さくなってしまうのです。

試験問題では、この「消えてしまった図形」がどこなのかを求める問題が頻出します。グラフの均衡点から取引量が減ったときに生まれる「もったいない空白」を見逃さないようにしましょう。

政策や市場の変化で余剰が移動する3つの頻出パターン

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 租税(従量税)の導入で政府が余剰を「横取り」する仕組み
  • 関税の撤廃や貿易自由化で消費者と生産者の余剰が激変する理由
  • 市場の失敗(独占・外部性)や価格規制が引き起こす余剰の移転

前章では、誰も邪魔をしない理想的な市場での余剰を見ました。しかし、現実には政府が税金をかけたり、海外から安い商品が入ってきたりして、この形は常に変化します。この章では、そうした「変化」が起きたときに、グラフ上の図形はどう動くかや、誰の「得」が増えて誰の「得」が減るのか、その仕組みを解説します。

租税(従量税)の導入で政府が余剰を「削る」仕組み

政府が商品に税金(従量税)をかけると、グラフ上では供給曲線が税額の分だけ上にシフトします。これによって消費者がお店で支払う価格は値上がりし、逆にお店側が手にする実入りは減ってしまいます。

このとき、グラフの中央に新たな「長方形」が現れます。これは、もともと消費者や生産者の余剰だった部分が、税金として政府に移転した「税収」のエリアです。

ここで注意すべきは、価格上昇によって買うのを諦める人が出るため、全体の取引量が減ってしまう点です。その結果、政府の税収にもならず、誰の得にもならずに消えてしまう「三角形(死荷重)」が必ず発生します。税金は財源確保のために必要ですが、経済的な効率性は少し下がってしまうのです。

グラフの動きを使って、もう少し詳しく解説します。


課税分だけ供給曲線の価格が上がる。結果、供給曲線1が供給曲線2に上シフトする。 


供給曲線2にシフトしたことで、取引価格が上がり取引量が減る。
その結果、消費者余剰と生産者余剰が減る。 


課税 x 課税後の取引量の分だけ税収が増える


元々の取引量 – 課税後の取引量の個所が、
課税により価格が上がったため買わなくなった人を表す。(死荷重)

貿易自由化で消費者と生産者の余剰が変化する理由

輸入によって、海外から安い商品が手に入るなど、貿易によって余剰は変化します。また、その輸入した製品に関税をかけるとさらに余剰が変化します。

貿易自由化について、関税について、各々どの様に余剰が変わるかを見ていきます。

貿易によって海外から安い価格(国際価格)の商品を輸入した場合

海外から安い商品が入ってくる「貿易自由化」が起きると、国内の市場価格は国際価格の水準まで下がります。これは消費者にとって朗報であり、安く買える分だけ「消費者余剰」の面積は大きく拡大します。

一方で、国内の生産者にとっては嬉しくない状況となります。安い輸入品との競争にさらされ、販売価格も数量も減るため、「生産者余剰」は縮小してしまうのです。

こちらも、グラフをゆっくり動かして確認してみましょう。


元々の価格よりも、国際価格(輸入した価格)が安い場合、
沢山買えるようになるので消費者余剰が増えます。


しかし、消費者余剰は増えましたが、価格が下がっているので、
その分生産者余剰が下がってしまうので(国際価格まで下がった金額で生産できる会社が減る)、
増えた消費者余剰の一部を賄う事が出来なくなります。


そこで、消費者余剰の一部を輸入を使って賄います。

輸入した商品に関税をかけた場合

次に関税について見てみます。輸入によって、消費者余剰は増えましたが、その分生産者余剰が減ってしまいます。国際価格で商品を売る事が出来ない生産者が増えるからです。そこで、関税をかけることで生産者余剰を増やします。輸入した物に関税をかけると、価格が国際価格+関税となります。その結果価格が上がり、消費者余剰が減り、生産者余剰が上がります。関税の分の税収は増えますが、グラフの2つの三角形の個所に死荷重が生まれます。

こちらもグラフを ちょっとずつ動かしながら確認してみます。


関税をかける事で、価格が国際価格+関税になる(価格が上がる)。
価格が上がる事により買えない人が増えるので、消費者余剰が減り、その分輸入分も減る。
また価格が上がる分、上がった価格なら作れる生産者が増えるので、生産者余剰は上がる。


価格が国際価格+関税になる事で関税収入が生まれる。


関税関税収入は生まれるが、減った輸入分を全て賄うことは出来ず、死荷重が生まれる。

試験問題では、この変化の様子をグラフで比較させる問いがよく出ます。重要なのは、生産者の損失よりも消費者の利益(プラス分)のほうが大きくなり、結果として国全体の「総余剰」は増えるという結論です。誰が泣いて誰が笑うのか、グラフの面積変化で冷静に見極めましょう。

市場の失敗(独占・外部不経済)や価格規制が引き起こす余剰の移転

独占企業や、生産による公害などの外部不経済でも余剰が変化します。こちらもどの様に変わるか見ていきます。

独占企業と完全市場による余剰の違い

市場はいつも完璧に機能するわけではありません。例えば、ライバル不在の「独占企業」は、自分の利益を最大にするために生産量をあえて減らし、価格を釣り上げることがあります。すると、本来なら消費者が得られるはずだった余剰の一部が、企業の「独占利潤」へと移転してしまいます。

何故そうなるのか、またグラフをゆっくり移動させつつ見てみます。


独占企業は、生産量も価格も需要曲線上であれば自分で選ぶことが出来ます。
ライバルがいないから、ライバルの生産量や価格を考えなくて良いからです。

そして、一般的に生産量を上げれば上げるほど、売り切る為に価格を安くする必要が出てきます。
なので、生産量を自分で選ぶことが出来る独占企業は、自社が一番儲かる生産量を自分で選ぼうとします。
マックスまで生産せずに、ちょっと生産量を抑えた方が、
価格が下がらず儲かるだろうと考えるわけですね

「一個売ったらどれくらい儲かるか?」を表す限界収入曲線をグラフ上に書くと以下の様になります。
取引量が上がれば上がるほど、限界収入曲線上の価格は、需要曲線の価格よりも速く下がっていきます。


①の図に、限界費用曲線(便宜的に供給曲線と考えてもよい)を描くと、以下のようになります。
独占企業の生産量は、限界収入曲線と限界費用曲線が交わる点で決まります。
限界費用が限界収入を上回るところまで作ると、
その追加分についてはコストの方が大きくなり、利潤が減ってしまうからです。


この時の価格は、生産量を決めたあと、その生産量に対応する需要曲線上の点で決まります。
限界収入曲線は「もう1単位売ったときの売上の増え方」を表すもので、
実際に付ける価格は、需要曲線から読み取る必要があるからです。
よって、消費者余剰と生産者余剰は以下の様になります。


残った三角形の部分が死荷重になります。
独占企業と完全市場を比べた時、消費者余剰は減り、
生産者余剰の変化は場合によります(今回の図の場合増えているように見えますね。)。
そして、死荷重の分だけ総余剰が減ります。

外部不経済が起こった時の余剰の変化

また、公害(外部不経済)が発生している場合や、政府が「家賃規制」などで価格を無理にコントロールした場合も、市場のバランスは崩れます。これらのケースでは、最適な取引量よりも少なくなったり多なったりするため、やはり「死荷重」が発生します。

「誰かの都合」で市場が歪められたとき、余剰という名の「得」がどう削られ、誰に移ったのかを追跡することが、正解への鍵となります。

外部不経済に関しては、色々と論点があるので、別の記事でしっかり紹介します。

グラフ問題で図形の変化に迷わなくなる3つの解法テクニック

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • まずは「取引量」の変化から死荷重の図形を特定する
  • 価格の線が「誰の財布」を仕切っているかを瞬時に見極める
  • 「補助金」と「増税」で図形が左右どちらに現れるかの判定術

余剰は、様々な条件で変化します。その変化によって、グラフ上のどこが何を意味するのかが、良くわからなくなる事があります。しかし、複雑に見えるグラフも、見るべきポイントさえ決める事で、迷わずに読み解けるようになります。ここでは、確実に正解するための、シンプルかつ強力な3つの視点をお伝えします。

私の場合は、頭の中で図形を動かしながら、どこがどうなるのかを考えていきます。なかなか難しく、大変ですが、何度も繰り返し問題に挑みましょう。

まずは「取引量」の変化から死荷重の図形を特定する

グラフ問題で一番よく聞かれるのが「死荷重(無駄になってしまった部分)」の場所です。これを見つけるコツは、グラフの真ん中にある「均衡点(需要と供給の交差点)」からスタートすることです。

税金や規制が入ると、取引される数量は本来の均衡点より「減る」ことがほとんどです。このとき、均衡点と「減ってしまった後の取引量」との間にできる図形(隙間の三角形)が、まさに死荷重です。

まず指で「取引量がどこまで後退したか」をなぞり、均衡点との間にできた「空白の三角形」を見つける。これが図形を読み解く第一歩です。

価格の線が「誰のお金」を仕切っているかを冷静に見極める

税金がかかると、グラフ上には「消費者が支払う高い価格」と「お店が受け取る安い価格」の2本の線が現れ、混乱しがちです。ここで迷わないためには、「上は買い手、下は売り手」と覚えましょう。

高い方の価格線より上が「消費者余剰(買った人の得)」、安い方の価格線より下が「生産者余剰(売った人の得)」です。そして、その2本の価格線に挟まれた真ん中の四角形が「政府の税収」になります。

どの線が誰のお金の境界線なのかを意識すれば、あとはその図形が、消費者余剰なのか生産者余剰なのか税収なのかが判断できます。

「補助金」と「増税」で三角形が左右どちらに現れるかの判定術

死荷重の三角形が、均衡点の「左」に出るか「右」に出るかで迷うことがあります。これを一発で見分けるシンプルな法則があります。

「増税」や「関税」のように、取引の邪魔をして数量を減らす政策なら、三角形は均衡点の左側(取引が減った空白部分)に現れます。逆に、「補助金」のように、本来よりも取引を無理やり増やす政策なら、三角形は均衡点の右側(作りすぎ・使いすぎた部分)に突き出します。

「減らすなら左、増やすなら右」。このイメージを持っておくだけで、選択肢を瞬時に半分以下に絞り込めるようになるでしょう。

まとめ

この記事では、経済学の余剰分析について、グラフの見方から試験で使える解法テクニックまでを解説しました。

  • 余剰とは「お得感」:価格線を境に、上が消費者の得、下が生産者の得を表す。
  • 均衡点がベスト:需要と供給が一致する点で、社会全体の余剰(面積)は最大になる。
  • 税金は余剰を削る:政府が税金を取ると取引量が減り、誰の得にもならない「死荷重」が生まれる。
  • 貿易は総余剰を増やす:生産者は苦しくなることもあるが、消費者のメリットが上回り、国全体ではプラスになる。
  • 三角形の探し方:取引が減れば均衡点の「左」、無理に増やせば「右」に死荷重の三角形が現れる。

経済学のグラフ問題は、決して難解なパズルではありません。描かれている線や面積は、私たちの日々の買い物や商売のリアルな姿を映し出したものです。その線や図形が何を意味するのかを、しっかり意識しましょう。まずは過去問のグラフ等を指でなぞり、「ここが買い手の得」「ここが無駄になった分」と確認してみてください。

ざっくりとグラフを丸暗記するのではなく、一つ一つ意味を理解する事で、解きやすくなるはずです。

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